暗黒星雲に関するキホン

 

暗黒星雲とは?

 

天の川を眺めると、ところどころに穴があいたように星の数が少ない暗黒の領域があります。

何も存在しないので暗く見えているわけではありません。これは、その方向に暗黒星雲が存在しているのです。

南天の天の川。

中央にぽっかりあいている穴のようにみえるのは、コールサックという名前の暗黒星雲。

 

 

宇宙は完全な真空ではありません

地上の大気中では、1cmの立方体の中に含まれる窒素や酸素の分子の数は約3×10^19個です。それに対して宇宙空間では1cm立方体の中に含まれる分子や原子の数は1〜10^5個(10万個)です。地上に比べると随分差がありますが宇宙空間は完全な真空ではありません。

 

星間物質

地上から天の川を見ると、星が密集していてその間にあまり空間がないように思えるかもしれません。ところが、星が占めている体積はほんのわずかで、ほとんど大部分の体積が星間物質といっても過言ではありません。つまり、星々の間の空間(星間空間)を満たしているのが星間物質です。

 

星間物質の正体


星間物質が占める星間空間は場所によって密度の大小がありますが、平均すると1立方cm に1個程度の粒子があります。これらの粒子の9割が水素原子で残りの1割がヘリウム原子です。その他の原子もありますが、全体の0.1%程度に過ぎません。

そして星間物質の質量の1%程度は、星間塵(ダストといわれる小さい固体粒子)です。代表的な大きさは0.1μmくらいです。背景の星の光を赤くしたり(星間赤化)、吸収したり(星間吸収)します。

 

暗黒星雲は星間物質でできている


銀河系内の星間物質の分布は一様ではありません。密度の低い場所や高い場所などさまざまです。特に密度の高い領域があります。このような星間物質の密度の高い領域が太陽系の近くにあると、背景の星や散光星雲の光を遮って暗く(シルエットとして)見えます。これが暗黒星雲です。暗黒星雲は、星間物質で構成されています。

 

暗黒星雲は、星など自ら光を発する天体を背景にすることによって黒く浮かび上がって見えます。地上から観測した場合、塵やガスによって背景の星や銀河などの光が吸収され、あたかも黒い雲のように見えます。オリオン座の馬頭星雲が有名です。(提供:NASA and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA))

 

暗黒星雲は、周囲より特に暗くなっていることでその存在がわかります。その成分であるガスのほとんどが分子になっているため、(星間)分子雲と呼ばれることもあります。また、暗黒星雲のサイズは様々です。 直径1光年以下の小型グロビュールから数光年程度のボック・グロビュール、さらには数百光年に及ぶ暗黒星雲複合体があります。質量は太陽の数10倍のものから100万倍に達するものまで存在します。

ic2944

グロビュール

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「サッカレーのグロビュール」。グロビュール(globule)とは、明るく輝く星雲の背景に浮かび上がる、暗く不透明な球形の暗黒星雲です。周囲に見える赤いところは星形成領域 IC2944で、ケンタウルス座の方向にあります。(提供:NASA and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA)、謝辞:Bo Reipurth (University of Hawaii))

 

暗黒星雲は星の誕生の場

暗黒星雲は星の材料の宝庫です。暗黒星雲中の星間物質は自己重力で収縮し、やがて星が誕生してゆくと考えられています。

暗黒星雲は星の誕生の場として重要な役割を果たしているのです。

これまでの研究から、暗黒星雲の温度は非常に低温(多くは10K程度)であることが分かっています。暗黒星雲が非常に低温なのは、分子ガスやダストの放射による冷却もさることながら暗黒星雲を暖める熱源が少ないためです。暗黒星雲内部には生まれつつある低温の星以外に熱源をもちません。外部からの紫外線やX線はダストによって遮られ雲の内部には入ってこれません。また、このように暗黒星雲の温度は非常に低温であるため可視光域に電磁波を放出することができないのです。

 

太陽や地球も暗黒星雲から生まれた

暗黒星雲は星の誕生の場として、銀河系の中でも特に重要な役割を果たしています。太陽のような恒星や地球のような惑星も、46 億年前にどこかの暗黒星雲の中で誕生したのです。